積み立て投資に有利な非課税制度
80歳、90歳など長生きが当たり前となった今、老後破産を防ぐ最良の方法は現役で働いているうちに老後資金を貯めておくことだ。残された時間と定期的な収入が十分にある現役世代であれば、リスクを取って利益を狙う資産運用も可能だが、住宅費や教育費など生活にかかる費用も多いため運用に必要な資金が乏しいといった、老後とは正反対の問題もある。
そういった状況の場合、選ぶべき現実的な投資方法は毎月少額ずつでも投信などを買い増していく「(定額)積み立て投資」だ。積み立て方式の投資であれば元手は必要とせず、長期間続けさえすれば高確率で利益を上げることができる。
毎月定額で買い続けることが利益に繋がる
例えば、バブル経済の絶頂期1989年12月から積み立て投資を始めていたとする。開始直後から日経平均株価は10年以上、大幅下落が続いていて、直近でも開始時点のせいぜい半分程度までしか戻していない。それでも今まで28年間積み立てを続けた人は、計算してみると投資元本に対して40%以上の利益を出している計算となる。さらに、もっと直近のバブルである2000年3月(ITバブル)や2007年6月(リーマンショック前夜)に積み立てを始めた人の場合、現時点(2017年11月)での利益率は60%を超える計算となる。
この期間、投資家が行ったのは「毎月同じ金額を積み立てた」だけである。なぜこのような状況が起こったのだろうか。その仕組みは以下のようなシンプルな理由からだ。
実は定額積み立てでは、仮に意識していなくても「投信が安いときには多めの口数を買い、高いときには少なめに買う」といった仕組みになっているため、購入単価の平均値が自然と下がる仕組みとなっている。そのため、長期間の運用の最終場面で相場がある程度上昇する局面を迎えれば利益が得られるようになっている。
これからは2つの「運用益非課税」制度に注目
2017年から2018年にかけては、その積み立て効果をさらに上げる新サービスも登場する。
まずその一つが、「つみたてNISA」だ。2018年1月開始予定のその新制度により、投資の運用益が非課税になるメリットがある。以前から運用益が非課税の「NISA(少額投資非課税制度)」は存在していたが、非課税期間が基本的に最大5年間しかなかったため、長期間の積み立て投資には向いていなかった。その点「つみたてNISA」は、まさに積み立て専用と呼べるもの。従来のNISAと比べて年間の投資枠が少ない代わりに、最大20年後まで非課税期間が続く。ちなみに2つのNISAはどちらか1つしか選べず、どちらかしか利用できない。
2つのNISAの主な違いは以下のとおり。
NISA
- 年間投資枠は120万円まで
- 非課税期間は最大5年間
- 個別株でも使える
つみたてNISA
- 年間投資枠40万円まで
- 非課税期間は最大20年間
- 一部の投信だけが対象
そしてもう一つの積み立て投資が非課税になる制度が、2017年から大半の人が利用可能となった「iDeCo(個人型DC)」だ。2つの制度はそれぞれ内容が異なるが、最大の違いは「つみたてNISA」の税制メリットが「運用益非課税」だけなのに対し、「iDeCo」は積み立てた掛け金が所得控除の対象になり、給与の税金が一部戻るといった恩恵まで得られることだ。
また、つみたてNISAの非課税メリットは買った投信を一度売却した時点で終了するが、iDeCoであれば他の投信に乗り換えるなどの売買を何回繰り返しても非課税のままだ。ただ一方で、iDeCoには「入金した資金は60歳まで決して引き出せない」といった制約がある。
そのため、老後まで決して使わないと確信できる金額までは最優先でiDeCoを使い、それ以外の余剰資金でつみたてNISAを活用するのが正しい使い分け方法となる。
貯金感覚続けられる?超少額からの積み立て
現役世代は住宅費や教育費などに追われ、投資に回せる資金が少ない場合も多い。積み立て投資は、まずは始めて超少額であっても続けることが大事だ。ここからは、月々100円からでもできる投資を紹介。
2017年5月頃から、松井証券やSBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要なネット証券会社が一斉に、投信の最低購入金額を100円に引き下げた。従来は積み立てでも500円から、スポット購入であれば1,000円からなどだった。毎月の積み立て金額が少なくても分散投資の比率を守りやすくなった。ただし、投信の銘柄によっては100円で買えないものもあるので注意も必要。
特に注目なのが松井証券で、分散投資の資産配分を自動でアドバイスするロボアドバイザー機能が無料で使える。100円単位で積み立てられれば、ロボアドバイザーが提案した投資比率を少額でも正確に実践可能だ。まずは投資に慣れるという意味でも始めてみる価値はあるのかもしれない。