お金語り

日々の暮らしの中で出来る節約・貯蓄・投資方法など、お金に関すること

実家が「負動産」になる前に、早めの対策を検討したい

「自宅は大切な相続財産」。そんな親世代の思いは、もはや時代遅れかもしれない。不動産は子供たちの間で分けにくいうえに、すでに独立して別の家を構えている場合などは使い道がない。もしも空き家になれば、維持コストだけがかかる「負動産」にすらなりかねない。

その実家は本当に優良資産?そうでなければ早めの売却も検討すべき

子供が自宅を購入済みの場合など、実家の使い道がないケースは多い。空き家にしておくと家は急速に傷むうえ、固定資産税もかかる。少子高齢化が進む近年、将来的な値上がりが望める物件は極めて限定的となっている。実際2017年の地価公示では、首都圏外のベッドタウンでも価格の下落が目立ち始めた。不動産の専門家からも「今が売り時」という意見も多く、将来空き家になるようであれば処理上の手間も考慮して、親が元気なうちに売却を検討したい。

 

なかには、親がまだ健在で住んでいても、一刻も早い売却を決断すべき場合もある。その理由は、国が推し進める「立地適正化計画」という政策のためだ。年々人口が減少するなか、今までの行政サービスを維持するのは難しい。そこで「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」を設定し、居住者を一定の地域に集めるよう、各自治体に促しているのだ。国土交通省によると、2017年7月末時点で348都市で取り組みが進んでおり、うち112都市で居住誘導区域が設定・公表されている。

 

誘導区域では、人口密度を維持・増加させるような施策が打たれる一方、区域外となったエリアでは、一定以上の規模の宅地開発には事前の届け出が必要になるなど、街づくりにメリハリが付けられるようになる。今後、両者の間に急激な格差が生じる可能性は高いといえる。誘導区域の設定基準は自治体によって異なり、公共交通機関からのアクセスのしやすさなどで決まることも多い。実際に、一見同じような景色に見える隣接した地区の間で、明暗が分かれたケースもある。実家が誘導区域に含まれているかどうかは、今すぐ確認しておきたい。もしも誘導区域外であった場合は、現段階では地価にはまだ反映されていないので、早めの売却を検討したい。

あきらめるのはまだ早い!地方や郊外の古い家でも値が付く方法もある

地方や郊外に立地し、建ててから何十年もたつ実家。条件がいいとはお世辞にも言えず、すんなりと売れるとは到底思えない。しかし、こんな物件でも売れるかもしれない方法もある。いくつか紹介してみたい。

 

まず一つ目が、「買い取り再販」という方法。例えば、地方都市の郊外、築30~40年といった状態がいいとはいえない物件などは、そのままでは商品価値に乏しく、仲介業者は難色を示しがち。しかし、こうした物件でも買い取るのが「買い取り再販」と呼ばれる業者。買い取り価格は数百万程度だが、200~400万円かけて徹底的にリフォームされ、平均1,300万円でファミリー層に再販される。個人でリフォームするのは大変で、ましてや独立して離れた場所に住んでいる子供世代であれば、なるべく手間をかけずに売りたいところ。改装工事の過程で残っている不要品を一緒に処分できるメリットなどもある。

 

2つ目が、「空き家バンク」だ。山村など市街地ではない場所の物件は、買い手が見つかりにくく、市場での流通は難しい。自治体などが運営する空き家バンクもあるが、実際には各自治体ごとにバラバラでほとんど機能していないのが現状だ。そうった場合には、不動産情報サイトで実績を持つ「ライフルホームズ」や「アットホーム」が運営を手がける全国版「空き家バンク」を利用したい。こうしたサイトを利用することで、「田舎暮らしを考えている移住希望者」や「民泊」などへの活用を検討するオーナーへのアプローチも可能となる。

 

最後に3つ目が、「ホームステージング」。不動産の商品価値を上げる手法として、最近注目を集めている。空き家にレンタル家具を置くなどして、部屋を広く見せたり、印象を変えることができる。そうすることで、買い手の目に留まりやすく、成約までの期間が通常の3分の1程度まで短縮されたというデータもある。不動産会社が費用を負担してくれる場合などもあるので、相談してみるのも良いだろう。

自宅を売った後も住み続けることはできる

一方で、老後の備えに不安がある親世代は、持ち家の「活用」を考えたい。代表的な方法が、住宅を担保に銀行からお金を借りる「リバースモーゲージ」。通常のローンと異なるのは、利息だけを支払えばいい点だ。ただし、借りられる金額は限られる。まず、物件の評価額には建物は含まれず、土地のみで算出されるのが基本。このため、原則として「戸建て」が対象となる。さらに、価格下落のリスクを考慮し、借入限度額は保守的に見積もられ、評価額の3~7割にとどまるのが一般的。売却するよりもかなり低く、老後の生活資金に不安を感じた際の足しにする程度のものいえる。

 

これに対し、死後の住宅処分を生前に済ませてしまうのが「リースバック」。自宅を不動産会社などに売却した後でも、賃料を支払えば住み続けられるサービスだ。市場の売却価格に近い金額を得られる反面、所有権が無くなるため子供などに相続させることはできない。

 

今のところ、どちらも資産価値が高い首都圏が中心だが、今後は地方都市にも広がる見込みだ。